薬学部の奨学金

薬学部入学時、学費に不安がある場合は、奨学金を借りることが不安解消方法の一つとなります。ここでは、具体的にどのような奨学金制度があるのか見ていきましょう。

薬学部の学生が受けられる奨学金

大学生が受けられる奨学金制度としては、日本学生支援機構の奨学金が有名ですが、大学独自で成績が優秀な学生を対象に、授業料の減免や給付金による学業を支援する制度があります。

日本学生支援機構の奨学金

日本学生支援機構（JASSO）は、奨学金の給付・貸与を行っている独立行政法人です。年間130万人（学生の2.7人に1人）に対して奨学金を貸与しています。（※）2020年4月からは、給付奨学金（返済する必要がない奨学金）が拡充したことにより、条件に当てはまる場合は給付を狙うことで社会人になってからの返済が軽減されます。では、給付奨学金・貸与奨学金の両方について、その金額・種類・上限について見ていきましょう。

日本学生支援機構｜高校教員向け「進学マネー・ハンドブック」（2020年度版）PDF

給付型奨学金

給付型奨学金は、「給付」という文字の通り、返済の義務がありません。給付型奨学金による支援を受けるためには、世帯収入が基準を満たしていることが重要です。成績も加味されますが「学ぶ意欲」が大事なので、成績に自信が持てない場合でも検討してみましょう。給付型奨学金の対象になる世帯収入（両親・本人（18歳）・中学生（15歳）の4人世帯の場合）の目安は、非課税世帯かどうかで、具体的には年収約270万円が目安となります。

給付額（満額）は以下の通り。

	国公立	私立
自宅生	29,200円	38,300円
自宅外生	66,700円	75,800円

※生活保護世帯の自宅生・児童養護施設などから通学する場合には、国公立で33,300円、私立で42,500円の給付を受けられます。

なお、年収が増えるにつれ、給付額が2/3、1/3と減額されます。また、満額ではないものの、年収が約380万円までは給付対象になる可能性も。給付型奨学金の対象になる場合には、授業料や入学金が減免される制度が併用されます。減免される授業料の上限額は、国公立大学で約54万円、私立大学で約70万円。減免される入学金の上限額は、国公立大学で約28万円、私立大学で約26万円です。なお、入学金が減免されるのは、入学時点で支援を申請した場合であり、大学1年次後期以降から支援を受ける場合は入学金の減免対象にはなりません。

日本学生支援機構｜奨学金の制度（給付型）

自分は給付の対象になるか。また、その額など知りたい場合は、日本学生支援機構のHP（https://shogakukin-simulator.jasso.go.jp/）でシミュレーションができます。また、スマートフォン向けアプリでもシミュレーションができます（iOS：https://itunes.apple.com/jp/app/進学資金シミュレーター/id1401704319?mt=8、Android：https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.go.jasso.android）

貸与型奨学金

貸与型の奨学金は、第一種（無利子）と第二種（有利子）の二種類。第一種（無利子）の奨学金は、第二種（有利子）の奨学金よりも選考基準が厳しく設定されています。例えば、学力基準が第一種は平均評定3.5以上ですが、第二種は平均水準以上。年収要件も同様に第一種の方が厳しいですが、給付型奨学金よりは基準が緩いです。

第一種奨学金で借り入れられる金額は、以下から選択します。

• 国公立大学の自宅生の場合：2万円・3万円・4万5千円
• 国公立大学の自宅外生の場合：2万円・3万円・4万円・5万1千円
• 私立大学の自宅生の場合：2万円・3万円・4万円・5万4千円
• 私立大学の自宅外生の場合：2万円・3万円・4万円・5万円・6万4千円

なお、家計の年収が一定額以上の場合には借り入れ可能な上限額が変わります。また、給付型奨学金に採用されている場合にも借り入れ可能額が変わりますので注意が必要。第二種奨学金で借り入れられる金額は、月額2万円から12万円の間で、1万円刻みで選択することができます。私立大学の薬学部に進学している場合は、最高額の12万円に2万円の増額が可能ですので、最高額は14万円。

貸与型奨学金は、第一種と第二種の併用も可能。収入条件は第一種よりも厳しくなります。金利は、0.5％を切る低金利ですが、返済期間が長期になるため、併用する場合は無利子奨学金の割合が多い方が返済時の負担が軽くて済みます。

日本学生支援機構｜奨学金の制度(貸与型)

各大学ごとの奨学金制度

日本学生支援機構の奨学金の他にも、奨学金制度はたくさんありますが、特徴的な奨学金制度がある大学を紹介します。基本的には、成績優秀者に対する奨学金制度なので、入学時点や在学中に勉学に励むことが前提。

静岡県立大学

静岡県立大学には、地元企業よる奨学金制度（返還義務なし）があります。支援企業は18社もあります。給付額は様々ですが、月額5万円を給付してくれる企業がなんと6社も（TOKAIグループ、天野回漕店、万城食品、静清信用金庫、静岡ガス）。もちろん、採用される人数は若干名であり、採用者がいない場合もあります。

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岐阜医療科学大学

岐阜医療科学大学では、薬学部の学生を対象に、毎月3万円の奨学金を6年間給付する制度があります。総額は216万円。返還は不要なので、かなり恵まれた奨学金制度と言えます。選考基準は、一般選抜（前期A）と一般選抜（前期B）の合格者の成績上位10名。前期Aと前期Bは受ける試験が異なりますので、両試験の受験者比率を勘案して給付対象者が選ばれます。また、入学時点の成績で資格対象であっても、岐阜医療科学大学の奨学金に対する資格休止事項に該当する場合には給付が休止されますので、注意が必要。

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金城学院大学

金城学院大学には、大学独自の奨学金制度が多数あります。貸与型（無利子）奨学金は以下の通り。

• 金城学院大学貸与奨学金：修業年限内に卒業が見込まれる卒業年次生に対して額納金範囲内（薬学部の場合：約200万円）で貸与
• 金城学院みどり野会奨学金：金城学院の同窓会（みどり野会）がもうけた奨学金で学納金の範囲内で貸与（突然の経済的事情で修学が難しくなった学生が対象）

一方、給付型（突発的な経済的事情で修学が困難になった学生向け）には以下の種類があります。

• 金城学院緊急奨学金：授業料の範囲内（薬学部の場合：約200万円）で給付
• 金城学院大学父母会奨学金：年額60万円を給付
• 金城学院大学利子補給奨学金：提携金融機関の学費ローンを利用する場合、利子分を一定期間奨学金として給付

キリスト者または求道者の学生向け奨学金も。

• 金城学院スマイス奨学金：学力・人物ともに優秀な学生に授業料の範囲内（薬学部の場合：約200万円）で給付

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名城大学

学業・人物ともに優秀な学生に対する奨学金と、経済的理由により就学が困難な学生に対する制度があります。

• 学業優秀奨励制度：薬学科5年時制で、4年次までの学業成績及び人物優秀者について大学が対象者を選定
• 学業優秀奨学生：新4年次生で、3年次までの学業成績及び人物優秀者を対象に2名選定
• 名城大学校友会奨学生：人格円満かつ健康で学業成績及び体育技能が優秀な学生が給付対象（全学で30名程度）
• 名城大学薬学後援会沖縄奨学生：沖縄県の高等学校卒業生で名城薬学後援会会員の子女に対する奨学生制度
• 修学援助奨学生：経済的な理由で学業の継続が困難な学生に対して年額30万円を給付（成績優秀者用と家計の急変者の2つがある）
• 利子補給奨学生：三菱東京UFJ銀行の教育ローンを利用した学生を対象に、利子の半額または全額を奨学金として給付

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薬学部の学生が注意すべき奨学金問題

留年すると奨学金が停止される

一般的に奨学金制度とは、金銭的な理由で大学などに通うことが難しい学生に対する制度。支援を受けて勉学に励むということなので、留年してしまうとその貸与・給付対象から外れてしまいます。奨学金の給付・貸与を受けている以上は、勉学優先でしっかりと学ぶことが大切。なお、日本学生支援機構から奨学金を受けている場合は、奨学金の「停止」扱いになるので、出席状況や単位取得状況を提出すると進級後に奨学金の貸与を再開することができます。しかし、貸与再開の措置は、最終年次に留年した場合には対象になりません。進級がなく卒業してしまうからです。最終年次の留年の場合は、留年した年から奨学金の返済が始まってしまいます。もし、最終年次に留年してしまった場合には、奨学金の返済を卒業まで待ってもらうための手続きを必ず行いましょう。

就職後の年収が高いと、返済時の救済措置がきかない

奨学金は、利率が低く、返済期間が長めに設定されているので、月々の額はそれほど高いものではありません。しかし、社会人1年目であれば、賃金が比較的少ないため、多少の支出も結構な痛手になる場合も。そういった人のために、奨学金の返済について救済措置が設けられています。具体的には、返済額の減額措置や、返済期間の猶予（通算10年分）を申請することができる場合も。この減額や返済猶予の対象になる年収要件は、約300万円です。薬剤師の平均年収（新卒）は、350万円〜400万円が相場。つまり薬剤師は、これらの制度の対象から外れる可能性があります。もちろん、就職先にもよるので、減額・返済猶予の条件について確認しておくことが重要。

なお、減額・返済猶予の措置によって、返済総額が変わるものではないので注意しておきましょう。

学費を免除できる薬学部はある？

奨学金の説明でも紹介した通り、世帯年収などの基準に合致する場合には、授業料や入学金が減免される制度があります。これは、国の「高等教育の修学支援制度」によるものなので、国内の大学についてはほぼ対象と考えて問題ありません。経済的な事由による入学金・授業料の減免については、国の制度として整備されている一方で、特に私立大学では成績優秀な学生に対する入学金・授業料の減免制度が充実している場合があります。

愛知学院大学

新入生特待生制度という名前で、対象入試（前期試験A、「共通テスト」利用試験Ⅰ期）を受験し、得点率が70％以上の学生が対象。薬学部の学生は、免除額が230万円です。対象学生数は264名で、対象者が枠を超えた場合には成績上位者から選抜となります。

金城学院大学

一般入試（前期・2,3科目型）と共通テスト利用入試（前期）の上位それぞれ100名を対象に、年間学費が50万円になる制度があります。給付対象が200名で、薬学科の場合は年間学費1,188万円（6年分）が300万円になる、大幅な学費免除制度。入試での得点率が80％以上と、ハードルは高いですが、国公立大学程度の授業料で済むのはかなり大きいです。なお、2年次以降も継続する条件は、上位40％以上をキープしなければなりません。もし、減額制度の対象にならなかった場合でも、再度40％以内に戻ることができれば、給付対象となることができます。他大学ではなかなかない制度であり、対象者が200名とかなり多いことも魅力。